プッシュ屋稼業 競馬残日録

〜修行編〜 世の中にヘンテコな稼ぎ方は数あれど……

馬は0から4までのキャラを持つ(1)

【おことわり】ここからは話をわかりやすくするため、しばらくは藤堂の語りだけで進行します。

 

……では、第1の馬券の奥義「 馬のキャラクター 」を解説する。もう一度断っておくと、キャラクター(以下キャラ)とは、その馬が持つ 能力を発揮しやすい得意な条件 と言ってもよい。一例として「中山だと走る」「暑くなると調子がいい」などは普段よく使われる言葉だ。

 

まず初めに、比較対象として名馬たちについての話をしよう。

名馬と呼ばれる馬の条件はいろいろあるだろうが、その1つに「どんな条件でも走れる」ことが挙げられる。

季節、場所、天候、距離、負担重量……そのどれも苦にすることなく、常に最高と思われるパフォーマンスを発揮する。そんな希有な能力を持つ数少ない優駿たち、これは名馬と呼んで差し支えない。

逆に言えば、このような歴史的名馬たちの真のキャラは、ある意味謎に包まれることが多い。つまりその馬が本当に一番強い姿を見せつけた条件は、果たして何だったのか、よく名馬の引退時に議論の対象となることがある。変わった例として「一度も走ったことはないけど、この馬はダートも鬼だよ」など、引退後に名馬を一番知る厩舎関係者からコメントが漏れてくるときもあるが、それとて真相は霧の中だ。

これらの名馬たちは、能力が突出しすぎていて、日本の競馬場ではその究極の力を発揮しないまま引退していった可能性がある。よって真のキャラは、わからずじまい。あえて言えば、牡馬が引退後に種牡馬となり産駒を輩出し始めると、その産駒の成績からキャラがおぼろげに分かるときもあるが、生産は繁殖牝馬にも影響されることなので、その全てが名馬の隠されたキャラであるとは言いにくい。

よって「ときに走ったり、ときに走らなかったりする」その他大勢の競争馬の方が、キャラが分かりやすいし、またキャラを論じる意味があると言える。

 

ここでは初心者にもよくわかり、かつ、馬券に役立つ奥義を紹介しなければならない。となれば結論として「競争馬をキャラ別に分けてみよう」と言っても「毛色」「血統」のように、枝葉の多い分類法は煩雑で使いにくいだろう。そこでいったん、全ての馬を 0、1、2、3、4 の5つの数字で表すことにした(注:分類が全部で5種類になるというわけではない。それについては後述する)。

土日の競馬新聞に載る馬だけでもおそらく数百頭にはなるだろうが、これを目に見える形で分けておけば、その時の条件に合わずふるい落とされ、以後は検討しなくてよい馬がたくさん出てくる。16頭立てのレースをこの分類でわずか8頭立てにしてしまえば、レースをより簡単に分析することができる。もっとも自分(藤堂)は、午後のレースしか見ないので、さらに手短に済むのだが。

 

数字の付け方自体はうんと簡単だし、すぐにでも方法をお教えできる。しかしそれをただ授けただけでは、怪しい5つの数字がフルスペックを発揮することはない。カンのいい方は使いこなすかも知れないが、最後のサジ加減がけっこうキモになるので、ここは慌てず読み進めていただきたい。

 

今日の話の最後として、まだ競馬1年生の弟子のアイツに宿題を出すことにしよう。次の言葉の反対の意味を持つ言葉を競馬用語を使って書きなさい、というものだ。みなさんにとっては簡単だから軽く答えてみてほしい。

 

時計(タイム)が早い →

良馬場・馬場がよい →

春競馬・秋競馬 →

中央場所 →

G1レース →

限定戦 →

特別戦 →

 

言い方が難しいものもあるし、答えが複数当てはまるものもある。しかし用語の意味が分かっていればどの答えでもほぼ正解でよい。

 

次回は宿題の答え合わせをしながら、解説を進めたい。