穴馬のための席は空いていなかった サンライズS
「はぁ〜〜、今週もダメだったか……」
「なんだ、また外れたのかぁ?」
「はい……中山10RサンライズSのシーブリーズライフを狙ったんですけど、いいところなく完敗でした」
「フンフン、どれどれ……ハハーン、なるほど……で結果がこれか……」
「どんなもんでしょうか?」
「2着のスマートオリオンはともかく、1着レオンビスティー、3着ポアゾンブラックは、もともとがオープン馬だからなあ……。これを混戦と読んだ大局観がまず間違っているんじゃないのか?」
「……そういえば、上位馬と4着以下とはずいぶん競馬ぶりも違ってた気が……」
「お前には『04キャラ』という武器を授けたわけだが、決してそれを万能と思っちゃいけねえよ。キャラ分けも手早くできるようになったし、2型を狙ったのも悪くねえ。しかし理論は理論、肝心なのは使い方だ。複勝の3席のうち、すでに2席まで埋まっていそうなレースに手を出したのが、果たして賢明だったのかどうか、ということだな」
「レース選択ですか……」
「冬は芝レースが少ないから、どうしても買う機会が限られる。少頭数では配当も見込めないし、16頭立ての準オープン戦が魅力的に映るのもよく分かる。しかし、焦りは自分の観察眼を曇らせる。1日に1回はきっとチャンスがあるから、それを先入観なく根気よく待つことだ。これはお前だけでなく、オレ自身に向けた戒めでもあるが……」
「藤堂さん、今週は買わなかったんですか?」
「ああ、客がいなかったからな。にしても今週はチャンスが少なかった。依頼があったら苦しかっただろうな〜。昨日の京都最終12Rで2頭、今日の中山最終12Rで1頭……」
「はぁ、藤堂さんでも3頭だけですか……しかも最終まで待つのか……」
「そう、引きつけて、引きつけてな。ちなみに昨日の京都はラーストチカ、タガノザイオン、今日の中山はソールデスタンが狙い馬だった。これはお前の04キャラとはまったく異なる理論で導き出された結果だ」
「ホントだ。3、4型が1頭もいない……」
「もっというと、ラーストチカとソールデスタンは同じ買いシグナルを発している」
「買いシグナル……」
「……まあいい、忘れろ。競馬は奥が深いんだ。今は自分の武器を一つ一つ磨いていけ。なーに、的中につき1万円のお年玉が手に入れば、負け分なんてすぐにチャラになるさ。それと……」
「なんですか?」
「勝負が終わったら、こうやって反省をする癖をつけろ。負けっ放しは1番ダメだ」
確かに今週の中山では、0、1、2型という冬の開催らしくないキャラの馬がよく走った点に目を向けなければいけなかった。今日のサンライズSにしても、元オープン馬が2頭含まれる結果になったのだから、当然キャラは高レベル側にシフトする。
1着 レオンビスティー 1
2着 スマートオリオン 2
3着 ポアゾンブラック 1
3、4型の馬にチャンスはなかった。席は空いていなかったのだ。
「……なあ、今日、ポアゾンブラックが3着になったろ〜?」パソコンを見ながらボケーッとしていると、突然藤堂さんが聞いてきた。
「……ええ」
「で、今度同じ条件に出走してきたら、そいつのキャラはどう変わる?」
「……えーと、1、4型になりますね」
「この馬が昨春に勝った中山のOP春雷Sは、稍重馬場だったんだよな」
「……ええ……ん? あっ! そうか!」
「やっぱりポアゾンブラックは、時計がかかる馬場の適性を持っているってことだよな。……フフ、キャラから着順を逆に読むみたいで面白いな。いつか中山で必ずこの馬が3着になると仮定すれば……」
「今日3着になる可能性が最も高かった馬は、1型でもポアゾンブラック……ですか?」
「……ま、偶然かもな〜」
04キャラの新しい使い方か。ホント、競馬は奥深い。