プッシュ屋稼業 競馬残日録

〜修行編〜 世の中にヘンテコな稼ぎ方は数あれど……

1着、2着、3着にどれほどの価値の差があるか

あー、先週とは食生活が一転して貧しくなった……。

今夜は銀シャリにとれとれの新漁青のり、目玉焼き&味噌汁、以上。文句の一つもいいたいが、実はこの定食セットがバカうま! こうなりゃもう毎日これだっていい。

さすが女将さん、安くておいしいものを知っているネ。銀シャリおかわりだい!

 

「……そもそも、1、2、3着には、どんだけの価値の違いがあるかってことですよ! それを教えてもらわないと、いまいち04キャラを使いこなしてる感がないというか……」

今度から負けた週は、藤堂さんに遠慮なくズケズケ質問することにした。もう2週もノラリクラリ肝心なところの説明をはぐらかされている。こっちがもっとキリッとした雰囲気で迫れば、意外とあっさり秘密の部分を教えてくれるかもしれない、そう思ったからだ。

「…………先週、野生馬の話したろ? もう答えを言ったも同然なんだがな……」

しかし熱燗のとっくりを持つ藤堂さんの手は、落ち着き払っている。いいや、まだ負けないぞ。

「野生馬の話は聞きましたよ。ボスがいて、群れになって逃げて、2頭ずつペアを作るって話でしょ? でももう少し競馬に即した説明をしてくれないと……」

「んだからさ、野生でも併せ馬ってのは基本2頭でするわけだ。ならば競馬でも、最後の直線で競り合いを演じるのは、基本2頭ずつだと考えるわけよ」

「……フンフン。確かにゴール前は、2頭の首の上げ下げが圧倒的に多いですからね」

「だろ? そこからいくと……どうだ、1着、2着、3着は……?」

「……1着と2着の競り合いが最もし烈なんだから、1着と2着は、同じくらい価値があると見ていい?」

「それがオレの見解だ。記録上は月とスッポンほど違いのある1、2着馬だが、身体上はもはや同じくらい激しく消耗しちまってる。……後ろでは3着馬と4着馬も競り合ってはいるだろうが、馬にかかる負担でいえば、勝ち負けを演じる2頭の比じゃない。たまには3頭併せで飛んでくるケースもあるが……そりゃ、ま、レアケースだわな」

「そうですね。勝つことが使命の競走馬。なんとか前の馬を捕まえようと頑張れば、2着馬も1着馬と同じくらいのダメージはあるな……」

「そう考えるとさ、2着っていう着順を1回でも記録すると、弱い馬たちにとっては、いきなりそこが己の力の限界点である可能性もある」

「ハハア……となると、成績欄に2着が多くなってくれば、その所属クラスが最終到達点だっていうことも考えられるんですね」

「そう、04キャラにおいて、2型をひとまとめにして考えるのはそういう意味を含んでいる。2着を経験したその条件においては、ある程度限界の見えた馬たちだってことだ」

「となると、その馬の新たな面を見つけようとするなら?」

「1型ってのは適性有りそのものだから、オレたちが探す価値のあるお宝は、0型、3型になる出走条件じゃないか? 初距離、初コース、ダート替わり、いくらでも変わり身は考えられる。……フフ、オレは調教師じゃないけどな」

「……ふーん……それにしてもなぁ……じゃあ3着っていう着順は、なんか不思議な着順ってことになりますよ」

「そうだな、それは同感だ。3着ってのはかすかに適性を見せながら、次にまだ1着になる可能性、余力を残しているというのか……使いようによってはおもしろいキャラだ」

「3型の馬が、ホントにG1を勝つほどの変わり身を見せますかね〜?」