プッシュ屋稼業 競馬残日録

〜修行編〜 世の中にヘンテコな稼ぎ方は数あれど……

3、4型から飛躍を遂げた優駿たち

「確かに0、1型の馬がG1を勝つのは、なんの不思議もねえ。だがオレの記憶によれば……初めてG1を勝った時ということであれば、3型どころか、4型でも……2型でさえなければ条件次第で……獲っていった馬はいるぜ」

「そうですね、初めてのG1時と限定すれば話が簡単です。 例えば?」

「まず4型から見ていこう。3型、4型でG1タイトルを獲る馬たちは、なぜか個性派が多い。古いところでは追い込み一手のシルクジャスティス。こいつは3歳の有馬記念で初G1勝利を挙げるんだが、そのときのキャラが0、4型だ」

シルクジャスティスってG1で2着になったことがあったような……」

「ああ、ダービーでは惜しくも2着だった。しかしあれは左回りの2400だからな。興味深いのは、有馬の次走、阪神大賞典で久しぶりの2着になって、以来一度も勝てなかった……」

「うう、2着限界説が現実味を帯びて……」

「まだ早えよ。4型でいいなら逃げ馬タップダンスシチーのJCも4型での勝利だ」

「ああ、すごい大差勝ちだったんですよね」

「そう。当日の馬場が重馬場だったことも、4型の出番を後押ししたのかもしれないな」

「3型はどうですか?」

「何と言っても有馬記念マツリダゴッホだろう」

「ウハっ!そうか、あの馬は3型で……」

「条件戦時代から中山の鬼だったことは有名だが、距離の2500に関しては、1回走って日経賞の3着が最高だった。 次に新しいところでは……」

「そうですよ。昨シーズンの馬でいきましょう」

天皇賞秋を勝ったジャスタウェイも、3型での初勝利だった」

「あれ? あの馬はたくさん2着を経験してるはず……」

「フフ、たしかに左回り1505、東京0404で2型なんだが、距離の2000は中山金杯での3着が最高だった」

「へえ、あの馬こそ、G1では2着止まりと思った人も多かったでしょうね〜」

「それが2着の大本命ジェンティルドンナを差し置いての、圧勝だったからな」

 

 

「たしかに2型でさえなければ、競争馬はまだまだ上を目指せる可能性があることは分かりました」

「最後にもう1頭番外編を。今をときめくスーパーサイアー……」

「ん? ディープインパクトじゃなくて?」

「アホ! オルフェーヴルの父、ステイゴールドじゃ!」

「ああ、そうか、あの馬も現役時代は2着や3着の嵐でしたからね」

「ついたあだ名が、ブロンズメダルコレクター、だからな。条件戦時代からホントに2着が多くて、オープンまで来ると今度は3着ばかり。結局ライバルが強い時代だったこともあって、国内ではG1を獲れなかった……」

「……ああ、ハイハイ、わかったぞ! そんなステイゴールドが勝った最初で最後のG1が香港ヴァーズ! つまり0型になるわけだ」

「ま、そこへ一言加えれば、その前の海外初勝利は、当時G2だったドバイ・シーマ・クラシックだしな。これにはいろいろな意見があるだろうが、0型になる条件にステイゴールドを出走させ、しかも秘めた実力を覚醒させたスタッフの慧眼を褒めるべきじゃないか、というのがオレの考えだ。武豊が『羽が生えたかと思った』と絶賛したドバイでのゴール前の末脚を振り返るにつけ、その思いがいっそう強くなるのさ……」